着物を着る人が知っておきたい和裁の基礎知識
和裁(わさい)とは、着物をはじめとする和服を縫う技術のことだ。洋裁(ようさい)が洋服を縫う技術であるように、和裁は日本の衣服を作るための独自の技術体系を持つ。
着物を着るだけなら和裁の知識は必要ない。しかし、和裁の基本を知っておくと、着物の構造が理解でき、選び方・扱い方・お直しの判断が変わってくる。この記事では、着物を着る人が知っておくと役立つ和裁の基礎をまとめる。
着物の構造:主なパーツの名称
和裁を理解する第一歩は、着物がどんなパーツで構成されているかを知ることだ。
着物の胴体部分。前側と後側に分かれる。着物の大部分を占める最も大きなパーツ。
腕を通す部分。男性の着物は袖丈が短く、袖口が大きく開いているのが特徴。
首まわりの部分。長襦袢の半衿が見える箇所で、着姿の印象を決める重要なパーツ。
前身頃の内側に縫いつけられた細長い布。前合わせを作るために必要な部分。
後身頃の中心を縫い合わせた縫い目。背縫いが背中の中心に来るよう着ることが基本。
着物の下端部分。男性は裾をくるぶしが隠れる程度に合わせる。
和裁特有の縫い方
洋裁とは異なる、和裁独自の縫い方がある。着物を扱ううえで知っておくと理解が深まる。
| 縫い方 | 特徴・役割 |
|---|---|
| 本ぐけ | 表から縫い目が見えないように縫う方法。裾・衿先など仕上げに使われる。 |
| 並縫い(なみぬい) | 最も基本的な縫い方。等間隔で布を縫い合わせる。 |
| 半返し縫い | 強度が必要な部分に使う。縫い目を一針分ずつ返しながら縫い進める。 |
| しつけ縫い | 本縫いの前に仮で縫いつける方法。着物を仕立てた後、しつけ糸を取る前の状態で届くことがある。 |
和裁を知ると着物の「見方」が変わる3つのこと
1. 縫い代が内側にある理由がわかる
洋服の縫い代は通常外側(裏地側)に倒すが、和裁では縫い代を内側に折り込むことが多い。これは着物を「解いて(ほどいて)洗い張りする」ことを前提にした構造だからだ。着物は解いて一枚の布に戻し、洗って干してから仕立て直す文化がある。
2. サイズ直しができる理由がわかる
着物のサイズ直し(裄直し・身丈直しなど)が可能なのは、縫い代が十分に取られているからだ。布を切らずに縫い目を解いてつなぎ直すことができるため、洋服より融通が利く。リサイクル着物を選ぶときにサイズが「少し合わない」程度なら直せる場合が多いのはこのためだ。
3. 生地の状態がわかる
縫い目の細かさ・縫い糸の種類・布の耳(端)の処理を見ると、その着物の仕立てのレベルがわかる。手縫いか機械縫いかも確認できる。高い着物ほど手縫いで細かく縫われている。
着物のお直し(仕立て直し)の基礎知識
着物を長く着るうえで、お直しの知識は役に立つ。主なお直しの種類と費用の目安を紹介する。
| お直しの種類 | 内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 裄直し(ゆきなおし) | 裄(袖幅と肩幅)を伸ばす・縮める | 5,000〜15,000円 |
| 身丈直し | 着物全体の長さを調整する | 8,000〜20,000円 |
| 洗い張り(あらいはり) | 着物を解いて洗い、再仕立てする | 20,000〜50,000円 |
| 染み抜き | シミを取り除く作業 | 3,000〜30,000円(程度による) |
| 胴裏交換 | 袷の裏地を新しくする | 10,000〜25,000円 |
お直しは着物専門の仕立て屋(和裁士)や呉服店に依頼する。費用は着物の状態・素材・作業量によって変わるため、まず見積もりを取るのが基本だ。
和裁の道具:知っておくと着物の理解が深まる
和裁で使う主な道具を知っておくと、着物専門店で職人さんと話すときや、仕立ての話を聞くときに理解しやすくなる。
| 道具 | 役割 |
|---|---|
| 和裁用針(絹針・木綿針) | 素材に合わせた細い針を使い分ける |
| へら・くけ台 | 縫い目を整えたり、布を安定させて縫うための台 |
| 物差し(鯨尺) | 和裁では鯨尺(1尺=約37.9cm)という独自の単位を使う |
| チャコ(印つけ) | 布に縫い線を引くための道具。水で消えるものが多い |
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